キリムとは?
キリムは、アナトリア高原から中央アジア一帯に広がるチュルク族、アフガンからイランに暮らす遊牧民たちが織る“平織りの敷物”の総称です。
パイル織りのじゅうたん(カーペット)と、織りの技法の面で区別されます。
幾何学のモチーフはさまざまな意味を持ち、独創的な色やデザインは、その芸術性の高さでも注目されています。
目次
遊牧民の暮らしとともに
メソポタミアの乾燥地帯で暮らす遊牧民にとってヒツジ、ヤギ、ラクダなどの獣毛は手に入りやすい身近な繊維であり、古い時代から生活のあらゆる場面で使われてきました。
刈り取った毛を紡いで、縦横に織りあげるだけのキリムは、便利な生活道具として様々な工夫とともに進化してきました。
地面に敷いて使うだけでなく、キリムで居住空間のテントを作り、日除けのカーテンを作り、穀物を入れる袋や家財道具や財産を守る袋を作り、防寒用のコート、寝具用のクッションを作り、そしてだいぶ後の豊かな時代になって、装飾用のカバーなど手の込んだ織りが作られてきたのです。
日本人の我々が、木や植物の繊維でなんでも作って来たことと比べてみると面白いですね。
生活道具としてのキリムは、使い古してボロボロになったら捨てられてしまう運命ですから、古い時代のキリムはほとんど残っていないのです。
定住しない遊牧民が何も生活跡を残さないという背景もあるのだと思います。
博物館で見ることのできるもっとも古いものでも、15世紀のものとされるキリムが数点しかありません。
キリムの語源について
キリムとはもともと日本語だったSUSHI(スシ)とか、もともとフィンランド語だったSAUNA(サウナ)などの言葉が、英語やその他の言語に取り入れられて一般に使われる言葉になったのと同じように、もともとトルコ語で使われていたKILIM(キリム)という言葉は、世界中で一般に使われるようになったトルコ語です。
現在ではトルコといえばトルコ共和国のことですが、トルコ語を話す民族=チュルク族はアナトリア高原から中央アジアの広い地域に住んでいますし、オスマン帝国時代は東ヨーロッパ(バルカン半島)からロシア南部にも交流が及んでいますから、キリムの文化圏もとても広いことがわかります。
同様の文化を持つ広いエリアで織られており、イラン・アフガンでは「ギリム、ギレム」、東欧では「ケレム」などと発音されます。
ウールまたはコットンの平織りのものを指していて、敷物に限らずテント布や収納用具などの生活道具として使われていたものも、すべてキリムです。
ウールの平織りの敷物は、アフリカや南米にいたるまで広い地域で作られていましたが、中でもトルコ(アナトリア)のものはデザインや色が美しく、19世紀の末ごろから欧米の人々が好んで買い求めるようになったため、平織りの敷物の総称として、トルコ語のキリムが使われるようになったのです。
ガラタバザールで扱うキリムの主な産地
当店では…
「キリムが欲しい」「もっと身近なものとして使いたい」という世界中のキリムファンの声が集まり、21世紀に入ってから様々な“キリムに類似した商品”が作られるようになりました。 ・ウールまたは天然繊維を使った手織りであること。 キリム専門店として、この2つの点は創業以来かわらず守り続けています。 |
キリム織りの技法
一般的なキリム |
毛足のあるカーペット |
飾り糸を織り込むジジム |
刺繍のように見えるスマック |
上の図は、一般的なキリムの織り目を拡大したもの。
トルコでは垂直に縦糸をぴんと張った織り機に、横糸を通して目を詰めていきます。
色を切り替えるときは、横糸を折り返しますから、幾何学模様を織り込んでいくと、切り替え部分には隙間ができるのです。
キリムを織る技法や道具は、トルコ、中央アジア、イラン(ペルシア)でそれぞれ違ったものが見られます。
最もシンプルな平織りのほかに、飾り糸を織り込んでより複雑で頑丈な織りをつくる、ジジム(Cicim)やスマック(Sumak)、ジリ(Gili)など、さまざまな技法が用いられますが、すべて総称してキリムとして扱われます。
参考までに、英語でカーペットと呼ばれているのは、縦糸に結びつけた毛糸をカットしてパイル(毛足)のあるもので、キリムは含まれません。
文責:たくさがわ
キリムについてのお話は、これまでに仕入先で見たり聞いたりしたこと、本で調べたことをまとめてご紹介しています。主にトルコ・イスタンブールの絨毯屋さんでの体験が中心です。他で聞いたことと違うと感じられることもあるかもしれませんが、学術的な内容ではありませんので、ご了承ください。 また、個人的な意見や感じたことも多く含まれます。コピー・転用されませんようお願いいたします。 |
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